Zoomミーティング中、相手の発話を示す緑の枠がしっかり光っているのに、自分の耳には何も届かない。そんな経験をしたことはないでしょうか。私自身、重要なオンライン打ち合わせの最中やウェビナー(Webセミナー)の最中にこの現象に遭遇しました。相手は明らかに話し続けており、緑色の音量インジケーターも反応している——なのにAirPods Pro3からは2〜5秒程度の無音が生じるのです。
他の参加者にチャットで確認すると「ずっと話していますよ」と返信が来ました。つまり自分だけが相手の声を受け取れていない、という非対称なトラブルが起きていたわけです。最初はネットワークを疑い、次にZoomのノイズキャンセリング誤作動を疑い、AirPodsをケースに戻して再接続も試みました。しかし、どれも根本解決にはなりませんでした。
結論から言います。原因はZoomでも、Wi-Fiでも、AirPods本体でもありませんでした。 macOSが内部で管理しているBluetoothの制御プロセスが詰まり、音声データの受け渡しが停止する「デッドロック」状態に陥っていたのです。本記事では原因の特定・即時解決のコマンド・再発防止の自動化まで一本で解説します。
動作環境と再現条件:なぜハイスペックMacでも起きるのか

この問題は、以下の環境で生じました。
- Macbook Pro M4 Max 128GB(2024) / macOS Tahoe 26.5.1
- Airpods Pro 3
- Zoom 6.7.7(2026年6月時点の最新版)
- スリープさせることはあってもシャットダウン・再起動を行わずに数日稼働している
複数のアプリ(OllamaのローカルLLMなど)をバックグラウンドに待機させていたりはしますが、CPUとRAMの使用状況はそれぞれ6割程度。 スペックには問題ありません。
注目したいのは「数日稼働」という条件です。
私自身、Claude Codeに夜通しコーディングを任せながらMacBookをつけっぱなしにすることがよくあります。数日間再起動なしでスリープと復帰を繰り返し、そのままZoomミーティングに入ると、冒頭のトラブルが発生しやすくなります。
エンジニアや開発者はMacを長期間再起動しないケースが多く、この「稼働時間の長さ」が再現条件の一つになっている傾向があります。
「M4 Maxで128GBメモリを積んでいるのになぜ?」と思うかもしれませんが、これはCPU性能やRAM容量とは無関係です。問題の発生場所がハードウェアではなくmacOSのBluetoothデーモン層にあるためです。
Zoomやネットワークは無関係——本当の原因「Bluetoothバッファのデッドロック」

疑いやすい3つの仮説を検証する
仮説①:Zoomのノイズキャンセリング誤作動 Zoomの「背景雑音抑制」が音声をノイズと誤認識するケースは実在しますが、その場合は「断片的にしか聞こえない」「ロボット音声になる」という症状が多く、完全無音が数十秒続くパターンとは異なります。設定を「低」に変更しても改善しない場合、この仮説は外れです。
仮説②:Wi-Fiのパケットロス パケットロスが原因なら「自分の声も届かない」「映像も乱れる」症状が同時に出るはずです。相手には自分の声がクリアに届いており、映像も安定しているなら、ネットワークを疑うのは間違いです。
仮説③:AirPods Pro本体の不具合 AirPodsをケースに戻して再接続すると一時的に直る——この経験がある方は多いはずです。ただしこれは「AirPods本体の修復」ではなく、再接続によってmacOS側の状態がリセットされているに過ぎません。しばらくすると再発するのはそのためです。
本当の原因:bluetoothdのバッファ詰まり
正体は、macOS内部で動作しているBluetoothデーモン(`bluetoothd`)のバッファ詰まり、いわゆるデッドロック状態です。
- bluetoothd:macOSがBluetoothデバイスとの通信を管理するバックグラウンドプロセス
- バッファ:音声データを一時的に蓄えておく「溜め池」のようなもの
- デッドロック:複数の処理が互いの完了を待ち続け、どちらも先に進めなくなった状態
Zoomで通話する際、AirPodsは2つの役割を同時にこなす必要があります。スピーカーとして相手の音声を再生する(A2DPプロファイル:高音質ステレオ)と、マイクとして自分の声を送信する(HFPプロファイル:通話用モノラル)です。この2プロファイルの頻繁な切り替えが、長時間稼働しているmacOSのBluetoothデーモンに負荷をかけ、「接続済みと表示されているが内部では音声データの受け渡しが止まっている」状態を引き起こします。だからこそ「相手の枠は緑なのに声が届かない」という非対称な現象が起きるわけです。
解決策:ターミナルからBluetoothプロセスを再起動する手順

Macを再起動する必要はありません。 ターミナルから1行入力するだけで、数秒以内に解決できます。
手順:
command + スペースでSpotlightを開き「ターミナル」と入力してEnter- コマンド
sudo pkill bluetoothdを入力する Password:と表示されたらMacのログインパスワードを入力してEnter(画面には何も表示されませんが正しく入力されています)
実行後の挙動: コマンド実行直後、AirPodsの接続が一度切れます。「接続が解除されました」という通知が出ても慌てないでください。macOSがbluetoothdを自動再起動し、数秒後にAirPodsが自動で再接続されます。再接続後は相手の音声がクリアに聞こえるようになっているはずです。
一時的にAirpodsの接続が切れるので、ミーティング中に実施する場合は、あらかじめzoomのマイクとスピーカーをMacbook本体に切り替えてからコマンド実行をおすすめします。
会議前の予防措置として、重要なミーティングの前は「おまじない」として事前実行しておく習慣をつけるといいかもしれません。
【応用Tips】ショートカットアプリで復旧をワンクリック化する

会議中にターミナルを開いてコマンドを打ち、パスワードを入力する——このワークフローは明らかに煩雑です。Mac標準の「ショートカット」アプリを使ってメニューバーからワンクリックで実行できる仕組みを作っておきましょう。
設定手順:
- Spotlightで「ショートカット」アプリを起動し、右上の「+」で新規作成
- ショートカット名を「Bluetooth再起動」などに設定
- 検索バーで「シェルスクリプトを実行」を検索しダブルクリックで追加
- スクリプト入力欄に
sudo pkill bluetoothdを入力 - アクション設定から「管理者として実行」にチェック
- ショートカット詳細設定から「メニューバーにピンを固定」をオン
設定完了後は、メニューバーのショートカットアイコンをクリックして「Bluetooth再起動」を選ぶだけです。Touch ID認証のみで実行でき、ターミナルを開く必要はありません。
「面倒な手順を仕組みに落とし込む」——これは日常的なワークフロー自動化の基本的な考え方と同じです。一度設定してしまえば、次回以降は10秒もかからずに復旧できます。
よくある誤診と対処済みチェックリスト

❌ 効果がない(または根本解決にならない)対処法
| 対処法 | なぜ効果がないか |
|---|---|
| ZoomをいったんExit | OS側のbluetoothdはリセットされない |
| AirPodsをケースに戻して再接続 | 一時的に直るが、バッファ状態は根本解決せず再発しやすい |
| Wi-Fiの切断・再接続 | 原因がネットワークではないため無効 |
| Zoomのノイズキャンセリングをオフ | 別の問題のため無効 |
✅ 根本解決のチェックリスト
- [ ]
sudo pkill bluetoothdを実行しましたか? - [ ] 近くのiPhone/iPadのBluetoothを一時的にオフにしましたか?(自動切り替え干渉の排除)
- [ ] ZoomのオーディオでスピーカーとマイクがともにAirPodsに設定されていますか?
- [ ] ショートカットアプリでのワンクリック化は完了しましたか?
- [ ] たまには再起動しましょう
まとめ

MacBook ProとAirPods Pro3を組み合わせてZoomを使用している際に音声が途切れる・相手の声が聞こえなくなる問題は、macOSのBluetoothデーモン層に原因があります。MacBook Pro × AirPods Pro3でZoom使用中に音声が途切れる・聞こえなくなるこの現象は、以下の対処で解決できます。
- 症状:Zoom使用中、相手の声だけが途切れる・無音になる(自分の声は届いている)
- 原因:macOSのBluetoothデーモン(bluetoothd)のバッファ詰まりによるデッドロック
- 即時解決:
sudo pkill bluetoothd(Mac再起動不要) - 恒久対策:ショートカットアプリでワンクリック化
zoomとairpodsの組み合わせは快適な作業環境を作ってくれますが、macOSのBluetoothレイヤーという「見えない部分」に落とし穴があります。Macを長時間再起動せずに使う開発者の方には、ぜひこのコマンドを手元に置いておくことをお勧めします。

