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Gmailに移らなくていい——Claude Code × IMAPで受信箱の整理と返信下書きを自動化する

Shinpei Okada
Gmailに移らなくていい——Claude Code ×を象徴するイメージイラスト(IMAP)

メールの自動化という話は、たいてい「Gmailなら」から始まります。ご自身のメールも、Gmailに移さないかぎり自動化は無理だと思っていないでしょうか。私はその前提を満たしていません。自社のメールは、レンタルサーバーに付いてくる普通のIMAPで動いています。

それでも先日、10年分・1万通を超えるメールアカウントをClaude Codeから触れるようにして、受信箱の整理と返信下書きの作成まで通しました。契約も、アドレスも、メールソフトも変えていません。

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メール自動化の話が、いつもGmailから始まってしまう

LOFIR|受信箱をどうするか、三つの選択肢 の構造図:全面移行する(MXを変える、ソフトも変わる、戻すのは手間)/手で捌き続ける(何も変えない、何も楽にならない)/索引だけ足す(MXは触らない、アドレスも同じ、消せば元通り)。結論: 置き場所を変えず索引だけ足した(Claude・Code)

話がGmailから始まるのには、はっきりした理由があります。Google Workspace には Gemini(Googleの生成AI)が含まれていて、Gmailは、受信トレイの要約も、返信案の作成も、追加の契約なしにそのまま使えます。周辺ツールとの連携先も多く、AIでメールを自動化するなら近道であることは確かです。そこは否定しません。問題は、その近道が誰にでも開いているわけではない、という点です。

少し前まで「独自ドメインのメールをGmailに取り込んで、Gmail側で自動化する」という迂回路がありました。その道は、これから始める人にはもう開いていません。

GoogleはGmail の Gmailify と POP の今後の変更についてで、外部アカウントのメールをPOPで取り込む機能について「2026年の第1四半期以降、この機能の新規ユーザーに対するサポートは終了します」と告知しました。既存ユーザーは2027年1月まで使えますが、新規に設定することはできません。代替は、送信元側での自動転送か、モバイルアプリでのIMAP接続か、継続同期をともなわない一度きりのインポートです。

選択肢は3つあります。ひとつは、MXレコードごとGoogle Workspaceへ移す道。メールソフトもアドレスの管理方法も変わり、やめたくなったらMXを切り替え直すことになります。ふたつめは、今までどおり手で捌く道。何も変えない代わりに、何も楽になりません。三つめが、置き場所を変えずに手元へ索引だけを足す道です。MXもメールソフトもアドレスも触らず、やめたければ索引を消すだけで元に戻ります。

私が採ったのは三つ目でした。移行は失敗したときの被害が大きく、索引を足すだけなら消せば元に戻ります。

やっていることは「索引を手元に置く」だけ

LOFIR:数値ハイライト「索引化による容量削減の実測値」。索引サイズ 96MB、実体比率 2.0%、差分取り込み 0.2秒。全期間・全文検索できる索引が100MB以下に収まります(Claude・Code・IMAP)

仕組みは単純です。IMAPサーバーに接続し、ヘッダーと本文テキストだけを手元のデータベースに写します。添付ファイルは取りに行きません。

実測はこうでした。

  • 実体は 4,802MB / 10,801通
  • 手元の索引は 96MB。実体の 2.0%
  • 構築に99秒、以後の差分取り込みは0.2秒

理由は1通あたりの中央値に出ています。ヘッダーが3.9KB、本文テキストが1.7KB。合わせて6KB足らずです。容量の大半は添付ファイルなので、そこを持たないと決めた瞬間に、全期間・全文検索できる索引が100MB以下に収まります。

添付そのものは取りませんが、ファイル名は索引に残します。「見積書」「契約書」で検索すれば、それが付いたメールが引けます。実体はサーバーに残ったままで、全文や添付が必要になったときだけ取りに行く。手元は軽く、必要なものは全部ある状態です。

コンピュータの役割は「保存」から「生成・加工」へ移っている、と私はかねてから考えてきました。索引を置くというのは、それを自分のメールでやることでした。

Claude Codeでメールが操作できるようになると、作業中のタスクに関するメールを見に行くということが、同じ画面上で完結するようになります。例えば営業資料の作成中に。受託案件でウェブサイト制作をしながら。必要になったタイミングでその資料作成・案件に必要な参考情報をClaude Codeで取得できます。「誰々さんからメールで送られてきた資料を参照して○○したい」といったことを、同じ画面上からすぐにメールを探し出して、そのまま作業に取り込むことができます。

整理は「消す」ではなく「退避」から始める

索引ができると、受信箱の中身が数字で見えます。どんな種類のメールが多いか、それぞれ何通で何MBあるのかまで、頼めばすぐに集計してくれます。これもClaude Codeの強いところです。受信箱の容量をいちばん食っているのは、どんな種類のメールだと思われるでしょうか。

私の場合、自動生成されるレポートメールが、たった140通で受信箱の容量の38%(1,413MB)を占めていた。 通数では1.5%です。正体は、クライアント向けに自動配信していたWebサイトのアクセス解析レポートでした。中身はLooker Studioで見ることがほとんどで、届くPDFは「来たな」という程度の認識で、ほぼ読んでいません。

整理は自然言語で指示します。「配信が止まっている自動レポートを別のフォルダへ」「よくやり取りする相手のメールは絶対に動かさないで」。従来のフィルタは条件を自分で組み立てる必要がありましたが、やりたいことを言葉で伝えると、条件のほうを組み立ててくれます。

そのうえで安全装置をひとつ入れました。「一度でも自分が返信した相手には触らない」というルールです。これだけで3,971通、受信箱の42%が保護対象になりました。ただし正直に言うと、この指標は万能ではありません。メールで受け取って電話やチャットで返している相手も多く、「返信しているか」は思ったほど当てになりません。メーリングリストやCRMからの自動配信は問答無用で片付けてよく、その中から役に立ちそうなものだけ拾わせる、という使い分けのほうが実際には効きます。

「自分から自分へ届いた941通」で手が止まった

受信箱には、自分のアドレスから自分のアドレスへ届いたメールが941通ありました。差出人も宛先も自分。いかにもノイズです。一括で退避させるつもりでした。

念のため件名を開いて、手が止まりました。

918通は、2022年から2024年にかけての送信控えでした。 取引先とのやり取りそのもので、送信済みフォルダには1通も残っていません。2024年ごろにメールサーバーを移行した時期の設定が送信控えを受信箱に落としていたためで、2025年に設定が変わってからは正しく送信済みに入っていました。あの918通は、その3年間の唯一の写しだったのです。

危うく捨てるところだった、という話ではありません。分類ルールは、中身を見るまで正しいか分からないという話です。「自分宛はノイズ」は統計的にはほぼ正しく、この件では完全に間違っていました。

だから設計を切り替えました。AIに消させるのをやめ、AIに退避させて、人に見せる形にしたのです。削除はしない、移動だけ。移動前に対象の一覧を出して承認を取る。まず数通で試し、想定どおり動いてから残りを流す。地味ですが、AIに作業を任せるうえで「やらかさない」ための大事なプロセスです。結局のところ、いちばん確かな安全弁は消さないことそのものでした。消さずにアーカイブフォルダに移しておけば、間違えても後からどうとでもなります。

結果、受信箱は 9,458通 / 3,748MB から 6,650通 / 1,804MB に。1通も消していません。全部フォルダを移しただけです。

溜めていた仕事のほうから出てくる

溜めていた仕事のほうから出てくるを表すイラスト(Claude・Code・IMAP)

整理より先に効いたのは、探していなかった仕事のほうから出てくることでした。

受託の仕事では、仕様は打ち合わせだけでなくメールでも動きます。「あの機能、どちらで決まったか」を確かめたいとき、以前は記憶を頼りに検索窓へ言葉を打っていました。今は案件名と時期を伝えるだけで、関連するやり取りが時系列で並びます。送信済みも同じ索引にあるので、自分が何を約束したかまで追えます。仕様変更の経緯は、たいてい相手のメールではなく自分の返信に書いてあります。

返信し忘れの検出もできます。届いていて自分からの返信が一度も出ていないやり取りを拾わせると、忘れていたものが出てきます。見つけたときの感想は正直「まずい」でしたが、放置されるよりはるかにいい。抜け漏れは意志ではなく仕組みで減らすものだと実感しました。

下書きは、メールソフトを開く前に出来ている

これまではAIに文章を作らせても、チャットからコピーして貼り、宛先と件名を直す手間が残っていました。この段差が重く、「自分で書いたほうが早い」となりがちです。

今は作業の流れのまま「この件、先方に確認のメールを下書きしておいて」と言えば、メールソフトの下書きフォルダにそのまま現れます。宛先も件名も引用も組み上がった状態です。かなり使える、というのが正直な感想ですが、修正ゼロで送れたことはありません。手を入れるのはたいてい話の順番と、削りすぎた優先順位です。依頼する用件そのものは正確に書けているのに、なぜそれを頼むのかという背景や意図が足りなかったり、少しずれていたりする。そこを私が足して送る、という分担に落ち着いています。

文体は、自分の送信済みメールから借りる

AIに書かせたメールを、直さずにそのまま送れたことがあるでしょうか。Claude Codeにメール作成を依頼すると、大体の場合丁寧に書きすぎていて長すぎるメールが出来上がります。

LOFIR:ランキング図「AI下書きの字数は自分の文章より大幅に長い」。1位 AI下書き1位 2,026字、2位 AI下書き2位 2,025字、3位 AI下書き3位 1,583字、4位 自分の中央値 267字。自分の文章から遠ざかっていました(Claude・Code・IMAP)

過去10年ぶんの自分の送信メールから、引用と署名を除いた「実際に書いた文字数」を測ると、中央値は267字。70%が400字以下でした。一方、指示を与えずにAIに書かせた直近の3通は2,026字・2,025字・1,583字。10年分1,123通の中の歴代1位・2位・3位です。丁寧に書こうとするほど長くなり、自分の文章から遠ざかっていました。

対処は二段構えです。ひとつは、その相手に過去に自分が送ったメールを見本として渡すこと。書き出しの決まり文句、敬語の距離感、相手の呼び方、改行の入れ方は、実物から借りるのが確実です。もうひとつは、字数を機械で強制すること。目標250〜450字、上限800字を超えたら書き直させます。「短めに」という言葉のお願いは、たいてい守られません。

狙いは「声は本人のまま、構成は改善する」でした。語彙や言い回しは過去の自分に寄せ、結論を先に置く・依頼をひとつに絞る・根拠を最も強い一点に絞るといった構成の改善はしてもらう。前置きや恐縮の枕を削ると、短くなったうえに用件が伝わりやすくなります。内容が同じでも、伝わり方は書き方で変わります。

壊さないための約束事

壊さないための約束事を表すイラスト(Claude・Code・IMAP)

Claude Codeからメールを触れるようにするのは便利ですが、扱いを間違えれば大切なメールを消してしまいますし、認証情報の扱い次第ではセキュリティの事故にもなります。ここだけは慎重に進めてください。私が守っているルールです。

  • 認証情報を会話に貼らない。 パスワードをチャット欄に打ち込まず、macOSならキーチェーンに登録してスクリプトに読ませます。コマンドの引数に直接書くのも避けます
  • 読み取り専用から始める。 最初は索引を作るだけ。既読状態も勝手に変えないこと。未読管理は多くの人にとって進捗管理そのものだからです
  • 消さずに移す。 退避用フォルダへの移動だけにすれば、間違えても戻せます
  • まず数通で試し、承認を挟む。 何を、どこへ、何通動かすかを先に一覧で出させ、結果を目で確かめてから残りを流します
  • 記録を残す。 どのメールをどこへ動かしたかをログに残せば、後から戻せます

サーバー仕様の確認も要ります。IMAPサーバーには、メールの移動を1手でこなせるものとそうでないものがあります。後者では「コピーしてから元を消す」手順になり、消し方を誤ると同じフォルダの無関係なメールまで巻き込むことがあります。指定したメールだけを対象にできる仕組みがサーバー側にあるかを、作業前に確かめてください。

実際に踏んだ落とし穴も共有します。日本語のファイル名が付いた添付は、素朴に処理すると取りこぼします。 私の環境では、契約書や請求書といったまさに大事なメールが該当しました。処理した件数とサーバー上の実際の件数を突き合わせる工程を必ず入れてください。AIの「終わりました」を鵜呑みにせず、両側の数字が一致するかを見る。自動化全般に言えます。

この記事をClaude Codeに渡すところから始められます

この記事をClaude Codeに渡すところから始められますを表すイラスト(IMAP)

必要なのは、IMAPで接続できるメールアカウントと手元のパソコンだけです。手軽な始め方は、この記事のURLをClaude Codeに渡して、やりたいことを日本語で伝えることです。たとえばこう頼みます。

「この記事の手順で、私のIMAPメールの索引を作ってください。パスワードはキーチェーンに登録するので、そこから読む形にしてください。まずは読み取り専用で、整理や削除はしないでください」

あとはサーバー名や接続方式を聞かれたら答えるだけです。索引ができてから整理や下書きに進みます。順番を守ることが、そのまま安全策になります。

ひとつだけ、最初に身構えるかもしれない場所があります。パスワードをキーチェーンに登録する手順です。ターミナルを使うため、普段コマンドを打たない方はここで手が止まりがちです。とはいえ、詰まったらClaude Code自身に「キーチェーンへの登録方法を1手順ずつ教えて」と聞けば、その場で案内してくれます。分からないことを分からないまま聞ける相手が隣にいる、というのがこのやり方の利点でもあります。

私が使っているのはロリポップのハイスピードプランです。月額660円から、独自ドメインは無制限で、WordPressも快適に動きます。管理画面の使い勝手はエックスサーバーに一歩譲ると感じますが、コストパフォーマンスは高く、メールで困ったことはありません。今回の作業も標準のIMAPだけで完結しています。

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もっとも、この記事の要点はサーバー選びではありません。メール自動化のために契約を変える必要はなかった、ということです。手元に索引を足すだけで、受信箱は保管庫から作業台に変わりました。

自動化というと仕事が減る話に聞こえますが、実感は逆でした。諦めていた整理や後回しにしていた確認が片付くようになり、仕事は減らず、通せる量が増えました。

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この記事を書いた人

合同会社LOFIR 代表 / エンジニア。中学生のころ、HTML を手打ちしてホームページを作り、検索ロボットが巡回してくれる前の——Yahoo! に電話帳のように「登録申請」していた時代から Web に関わってきました。以来、メディア運営、コンサルティング、システム開発、制作チームのマネジメントを経て、2022 年に合同会社 LOFIR を設立。いまは中小企業の Web 制作・コンテンツ SEO・AI 導入支援を、自社開発の AI ワークフロー基盤「MIMIR」(n8n × Notion × 各社 LLM・40 以上の機能を 365 日稼働)と Claude Code で回しながら手がけています。このブログには、実際に手を動かして分かったことだけを書いています。

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